「自分が何をしたいか分からない」を乗り越える:自己肯定感を育む自己理解の方法
「自分が何をしたいか分からない」と感じる時
あなたは今、「自分が何をしたいのか、よく分からない」と感じていらっしゃいますか。あるいは、特別不満があるわけではないけれど、なんとなく心が満たされない、漠然とした感覚を抱えているかもしれません。
このような感覚は、多くの人が一度は経験することです。特に、日々の忙しさに追われていると、自分の心と向き合う時間がなくなり、自分の本当の気持ちや求めているものが見えにくくなることがあります。
そして、自分が何をしたいか分からないという状態は、時に自己肯定感を低く感じさせる原因にもなり得ます。「自分には情熱がない」「周りの人は楽しそうなのに」と、無意識のうちに自分を否定してしまうことがあるためです。
この記事では、「何をしたいか分からない」という状態の背景にある心理を探りながら、自己肯定感を育むためにも役立つ、自分の内面と向き合う具体的な方法をご紹介します。
なぜ「自分が何をしたいか分からない」と感じてしまうのか
「自分が何をしたいか分からない」という感覚には、いくつかの心理的な背景が考えられます。
1. 他人の期待や評価を優先してきた
他人の期待に応えようとすることや、周りからどう見られるかを気にしすぎるがあまり、自分の本当の気持ちや興味を抑え込んでしまうことがあります。これは、自己肯定感が低い人が陥りやすいパターンの一つです。他人の評価に価値を置くあまり、自分自身の内側にある声が聞こえにくくなってしまうのです。
2. 自分の感情や欲求に気づきにくい
自分の感情や「〇〇したい」という欲求を感じ取ること自体が苦手になっている場合があります。ネガティブな感情を避けてきたり、自分の欲求をワガママだと否定してきたりした経験があると、心の声に耳を澄ます習慣が失われがちです。
3. 過去の失敗を恐れている
何か新しいことを始めようとしたり、興味を持ったことに挑戦しようとしたりする際に、過去の失敗経験がブレーキをかけてしまうことがあります。「どうせうまくいかないだろう」という恐れが、意欲を削ぎ、次に何をしたら良いか分からなくさせてしまうのです。
4. 自分自身の価値を認められない
自己肯定感が低いと、「自分がやりたいと思うことなんて、価値がないのではないか」と考えてしまうことがあります。自分の興味や欲求を信じられないため、何に取り組むべきか分からなくなってしまうのです。
自己肯定感を育みながら「やりたいこと」を見つける具体的なステップ
「何をしたいか分からない」状態から抜け出し、自分の内面と繋がるためには、自己肯定感を育むアプローチが有効です。ここでは、すぐに実践できる具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:日常の「好き・嫌い」に意識を向ける
大それた「やりたいこと」を見つけようとする必要はありません。まずは、日々の生活の中で感じる小さな「好き」や「嫌い」に意識的に気づくことから始めましょう。
- どんな時に心地よいと感じますか?
- どんなことに興味を引かれますか?(テレビ番組、ニュースの見出し、お店のディスプレイなど、本当に些細なことで構いません)
- どんなことをしている時に時間があっという間に過ぎますか?
- 逆に、どんな時に嫌な気持ちになりますか?
- どんなことに関わっている時に疲弊しますか?
これらの小さな感情や反応は、あなたの内側にある価値観や欲求へのヒントです。メモを取るなどして、意識的に集めてみましょう。
ステップ2:過去の経験を振り返り「点」を集める
過去の経験の中に、あなたの興味や関心、そして能力を示す「点」が隠されています。成功体験だけでなく、楽しかったこと、夢中になったこと、たとえ挫折したとしても興味があったことなどを振り返ってみましょう。
- 子供の頃、どんな遊びが好きでしたか?
- 学生時代、どんな授業や活動に一番興味がありましたか?
- これまで経験した仕事や活動で、楽しかったこと、やりがいを感じたことは何ですか?
- 逆に、大変だったけれど学びがあった経験は何ですか?
- 友人や知人に「〇〇が得意だね」「〇〇について詳しいね」と言われたことはありますか?
これらの「点」を書き出してみると、意外な共通点が見つかったり、忘れていた興味を思い出したりすることがあります。
ステップ3:自分の感情に「名前をつける」練習をする
自分の感情に気づき、受け入れることは、自己肯定感を高める上で非常に重要です。そして、感情は自分が何を大切にしているか、何に反応しているかを知るための手がかりでもあります。
- 一日の終わりに、「今日、自分が感じた感情」をいくつか書き出してみましょう。(例:嬉しい、悲しい、イライラ、穏やか、モヤモヤ、ワクワクなど)
- その感情が生まれた具体的な状況を短く書き添えます。
- 感情に良い・悪いの評価をせず、「あ、今自分は〇〇と感じているんだな」と客観的に観察する練習をします。
ジャーナリング(書くこと)は、感情と思考を整理するのに非常に役立ちます。「今日の気分」や「心に引っかかっていること」などを自由に書き出す時間を持ちましょう。書くことで、漠然としていた感情や考えが明確になり、自分の内面への理解が深まります。
ステップ4:自分の「価値観」を探るワークをする
「価値観」とは、あなたが人生で最も大切にしたいと考えていることです。この価値観を知ることは、「何をしたいか分からない」状態に光を当てる強力な手助けとなります。
以下のような単語リストを参考に、自分にとって特に重要だと感じるものを5〜10個選んでみましょう。
- 成長、学び
- 貢献、役に立つこと
- 安定、安心
- 自由、独立
- 人間関係、繋がり
- 創造性、表現
- 健康、活力
- 楽しさ、喜び
- 公正、正義
- 挑戦、達成
選んだ価値観について、「なぜそれが大切なのか?」と問いを立てて考えてみます。あなたの「やりたいこと」は、これらの価値観と深く繋がっている可能性が高いです。
ステップ5:小さな「試み」を始めてみる
ステップ1〜4で集めたヒントをもとに、少しでも「面白そう」「興味がある」と感じたことがあれば、完璧を目指さずに小さな一歩を踏み出してみましょう。
例えば、
- 興味のある分野の本を1冊読んでみる
- オンラインで無料の入門講座を受けてみる
- 関連するイベントやコミュニティを調べてみる(参加は後で良い)
- ずっと気になっていたカフェに一人で入ってみる
- 普段通らない道を散歩してみる
これらの小さな試みは、新しい発見に繋がり、あなたの世界を広げます。そして、「できた」という小さな成功体験は、自己肯定感を育む力になります。結果がどうであれ、「試してみた自分」を認め、褒めてあげてください。
焦らず、自分を責めずに進む
「自分が何をしたいか分からない」という状態は、決して悪いことではありません。それは、これから自分自身の内面を深く知り、より自分らしい生き方を見つけていくための始まりかもしれません。
すぐに「これだ!」というものが見つからなくても、焦る必要はありません。ここでご紹介したステップを、あなたのペースで、自分を責めずに続けてみることが大切です。
自己肯定感を育むプロセスそのものが、あなたが自分の内側の声に気づき、本当に大切にしたいことを見つける手助けとなります。日々の小さな実践を通じて、あなたの心が求めるものに少しずつ近づいていけることを願っています。