不安や自己否定のループを断ち切る 自分の感情に気づき受け入れる方法
感情に振り回されていませんか?
「どうしてこんなに不安なんだろう」「また自分を否定する考えが浮かんできた」
このような感情や思考に、私たちは時に圧倒されてしまうことがあります。特に、自己肯定感が低いと感じている場合、不安や自己否定といったネガティブな感情に囚われやすく、そこから抜け出せない「ループ」にはまってしまうように感じられるかもしれません。
他人の評価が気になり、仕事や人間関係で一歩踏み出せない背景には、こうした感情を「感じてはいけないもの」「悪いもの」として否定したり、抑え込もうとしたりすることが影響している可能性があります。しかし、感情は私たちが生きている証であり、大切な自分からのメッセージでもあります。感情を無視したり、否定したりしても、それは消えるのではなく、形を変えて私たちを苦しめることがあります。
感情を受け入れることの重要性
自己肯定感を高め、心理的な壁を乗り越えるためには、自分の感情とどのように向き合うかが鍵となります。感情を「良い・悪い」と判断するのではなく、「ただそこに存在する」ものとして認め、受け入れる練習をすることで、感情に振り回されることが減り、心の安定を取り戻すことができるようになります。
感情を受け入れることは、感情をコントロールしたり、消したりすることではありません。それは、今自分が感じていることを正直に認め、「そう感じている自分」を許すということです。このプロセスは、自己理解を深め、自分自身への信頼感を育むことに繋がります。
自分の感情に気づくための具体的なステップ
感情を受け入れる第一歩は、「気づく」ことです。普段、私たちは感情が湧き上がっても、それを意識的に捉えることなくスルーしてしまったり、すぐにその感情の原因や解決策に思考を飛躍させてしまったりします。まずは、今、この瞬間に自分が何を感じているのかに意識を向ける練習をしましょう。
1. 立ち止まって「今、どう感じているか?」と自問する
一日に数回、または特定の出来事や状況に直面したときに、少し時間を取って立ち止まってみてください。そして、心の中で静かに「今、私は何を感じているだろうか?」と自分に問いかけてみます。
2. 感情に名前をつける(ラベリング)
感じている感情に、できるだけ具体的な言葉(感情名)をつけてみましょう。例えば、「漠然とした不快感」ではなく、「不安」「悲しみ」「怒り」「焦り」「恥ずかしさ」「戸惑い」などです。感情に名前をつけることで、感情を客観的に捉えやすくなり、感情に飲み込まれるのを防ぐことができます。感情の名前がすぐに思いつかない場合は、「何か嫌な感じ」「ざわざわする」といった表現でも構いません。
3. 体の感覚に意識を向ける
感情は、しばしば体の感覚と結びついています。不安を感じるとお腹が締め付けられる、緊張すると肩がこる、悲しいと胸が重くなる、などです。感じている感情が、体のどの部分に、どのような感覚として現れているかに意識を向けてみましょう。肩が凝っている、胃がキリキリする、心臓がドキドキするなど、具体的な体の感覚に気づくことも、感情を認識する手助けとなります。
実践ワーク:感情チェックイン
毎日、朝起きたとき、昼休憩、夜寝る前など、時間を決めて「感情チェックイン」を行う習慣をつけてみましょう。
- 静かな場所に座るか、リラックスできる姿勢になります。
- 数回深呼吸をして、体の力を抜きます。
- 「今、私は何を感じているだろうか?」と心の中で問いかけます。
- 心に浮かんだ感情や体の感覚を、良い・悪いの判断をせずにただ観察します。
- 可能であれば、感じたことをメモに書き出してみましょう。
このワークは、感情に気づくための基礎練習です。最初は難しく感じるかもしれませんが、繰り返し行うことで、自分の感情のパターンや癖に気づけるようになります。
自分の感情を受け入れるための具体的なステップ
感情に気づけるようになったら、次にそれを「受け入れる」ステップに移ります。これは、感情に同意したり、その感情の原因となった出来事を肯定したりすることではありません。あくまで、「今、自分はこのように感じているのだな」と、その感情の存在を認めることです。
1. 感情を良い・悪いで判断しない
私たちはつい、ネガティブな感情を「悪いもの」「感じてはいけないもの」と判断してしまいがちです。しかし、感情には良いも悪いもありません。それはただのエネルギーであり、情報です。怒りや悲しみ、不安といった感情も、私たち自身の一部です。「私は今、怒りを感じている」「私は今、不安を感じている」と、感情を事実としてそのまま受け止める練習をしましょう。
2. 感情に寄り添う自己共感
辛い感情を感じているときは、自分自身に対して優しく接することが大切です。あたかも親しい友人が辛い気持ちを打ち明けてくれたときに接するように、自分自身の感情に寄り添ってみましょう。「〇〇(感じている感情)を感じて、辛いんだね」「そう感じて当然だ」といった言葉を、心の中で自分自身に語りかけてみてください。これは「セルフコンパッション(自己への思いやり)」と呼ばれるアプローチで、感情的な苦痛を和らげるのに役立ちます。
3. 感情を表現する
感情を受け入れるプロセスでは、感情を安全な方法で表現することも有効です。頭の中でぐるぐる考えているだけでは、感情は滞留しがちです。紙に書き出す(ジャーナリング)、信頼できる人に話を聞いてもらう、泣く、体を動かす(散歩、軽い運動)、絵を描くなど、自分に合った方法で感情を外に出してみましょう。感情を言語化したり、形にしたりすることで、感情との間に適切な距離を取りやすくなります。
実践ワーク:感情を受け入れるジャーナリング
- 今感じている感情を、良い・悪いの判断をせずにそのまま紙に書き出してみましょう。
- 次に、「私は今、〇〇という感情を感じている」という事実を認めます。
- その感情を感じている自分自身に対して、「〇〇(感情名)を感じて、辛いんだね」「大丈夫だよ、そう感じてもいいんだよ」といった、労りや肯定の言葉を書き加えてみましょう。
- 最後に、その感情が一時的なものであることを思い出し、「この感情はいつか必ず変化する」という視点を加えてみましょう。
このワークは、感情を書き出すだけでなく、その感情を感じている自分自身を優しく受け止める練習になります。
感情を受け入れたその先に
感情を受け入れる練習を続けると、感情に振り回されることが減り、冷静に自分自身や状況を見つめられるようになります。感情は一時的なものであることを理解し、特定の感情が湧いても「この感情はいつか過ぎ去るだろう」と落ち着いて待つことができるようになります。
また、感情の背景にある自分の思考パターンや、満たされていないニーズに気づく手がかりを得られることもあります。例えば、強い不安の裏には「失敗してはいけない」という rigid な思考があったり、怒りの裏には「尊重されたい」というニーズがあったりするかもしれません。感情を入り口として、自分自身の深い部分を理解することは、自己肯定感を育む上で非常に重要です。
感情を受け入れることは、決して簡単なことではありませんし、すぐにできるようになるわけでもありません。特に、過去の経験から感情を抑圧する癖がついている場合は、時間と根気が必要です。完璧を目指す必要はありません。まずは、できることから、少しずつ練習を始めてみましょう。
まとめ
自己肯定感を高め、心理的な壁を克服するためには、自分の感情に気づき、それを否定せず受け入れることが不可欠です。
- 感情に「気づく」ためには、立ち止まり、感情に名前をつけ、体の感覚に意識を向ける練習をしましょう。
- 感情を「受け入れる」ためには、感情を良い・悪いで判断せず、自分自身に優しく接し、感情を安全な方法で表現することを試みましょう。
これらのステップは、不安や自己否定のループを断ち切り、自分自身との健全な関係を築くための土台となります。感情はあなたの敵ではありません。それは、あなたがあなた自身であるための大切な要素です。自分の感情と上手に付き合い、自己肯定感を育んでいく旅を、今日から始めてみませんか。